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冬は日差しがやわらかく感じるので、「紫外線対策は夏だけで大丈夫」と思っていませんか。ところが、スキーやスノーボードから帰ってきたら顔だけ日焼けしていた、という話はよく聞きますよね。雪の上では、空から届く紫外線に加えて、雪に反射した紫外線も浴びることになります。
この記事では、気象庁の解説ページと、環境省の「紫外線環境保健マニュアル2020」に書かれている内容をもとに、雪の照り返しで紫外線がどれくらい強くなるのか、標高との関係、目に起こる「雪目」の症状、スキー場で顔と目を守る対策を整理しました。体の症状については医療機関の解説も参考にしていますが、気になる症状があるときは自己判断せず、眼科や皮膚科に相談してくださいね。
雪の上で紫外線が強くなるのはなぜ?
まずは、雪の上で紫外線が強くなる仕組みを確認しておきましょう。ポイントは、地面で反射する紫外線と、空気の中で散らばる紫外線の2つです。
新雪は紫外線の80%を反射し、冬でも2倍近くになる
気象庁の「地表面の反射と紫外線」のページでは、屋外にいる人は、上空から地上に向かう紫外線(太陽からの直射光と、大気で散乱された光をあわせたもの)を浴びるだけでなく、地表面で反射された紫外線も浴びていると説明されています。そして、この反射の割合は地面の状態によって大きく違うそうです。
同じページによると、草地やアスファルトの反射率は10%かそれ以下ですが、砂浜では25%、新雪では80%にも達するとされています。環境省のマニュアルでも、新雪80%、砂浜10〜20%、コンクリート・アスファルト10%、水面10〜20%、草地・芝生・土の地面10%以下という数字が紹介されていました。
つまり、新雪の上に立っていると、空から届く紫外線に加えて、その8割ほどの紫外線が下からも返ってくることになります。環境省のマニュアルの図でも、晴天の新雪の上では、直接届く紫外線量に新雪で反射した紫外線量が加わり、「100%+80%」になるというイメージが示されていました。
気象庁のページでは、地表面で反射された紫外線の一部は上空に向かい、大気などでふたたび散乱されて地上に戻ってくるとも説明されています。つまり、地面の反射率が大きい場所では、反射率が小さい場所よりも、空から届く散乱光まで強くなるということです。
その例として、南極のように一面が雪原の場所では、上空からの紫外線量(UVインデックス)が、反射と散乱の効果によって、雪がないと仮定した場合と比べて4〜5割ほど増えることがわかっていると書かれていました。雪の上では、上からも下からも紫外線に囲まれていると考えたほうがよさそうです。
ここで気をつけたいのは、天気予報などで見るUVインデックスは、上空から地上に向かう紫外線の強さを示したものだという点です。気象庁のページでも、実際に浴びる紫外線量には地表面で反射される効果も含まれていることを考えに入れる必要がある、と書かれていました。予報の数字だけで安心しないようにしましょう。
環境省のマニュアルには、「冬の間の紫外線は危険ではない」という思い込みに対する説明が載っていました。それによると、一般的に冬の紫外線は弱いけれど、雪による反射によって2倍近いばく露量になるそうです。特に高い山では、それが顕著だとされています。
また、春先の、気温がそれほど高くないのに紫外線が強い時期は、特に注意が必要だとも書かれていました。春スキーの時期は、日差しが強くなってきているうえに雪もまだ残っているので、気温の感覚だけで判断しないほうがよいでしょう。
Xでも、晴れた日にスキーに行くと一度で雪焼けする、スキーではとても雪焼けする、といった声が見られました。寒くて汗をかきにくい冬でも、雪の上で長く過ごす日は、夏と同じように紫外線対策を考えておきたいですね。
標高が高いゲレンデでは紫外線がさらに強くなる
スキー場は山の上にあることが多いので、雪の反射に加えて、標高の高さも紫外線を強める要因になります。気象庁の「標高と紫外線」のページから、その理由を見ていきましょう。
標高1000mで約10%強く、晴れた日の昼前後はとくに注意
気象庁のページによると、紫外線は上空から地上に届くまでの間に、空気の分子やエーロゾル(大気中に浮かぶ細かい粒子)によって散乱され、強さが弱くなります。標高が高い場所では、その地点より上にある空気の量が少ないので、紫外線が散乱を受けにくくなり、受ける紫外線が強くなるそうです。
さらに、標高が高いと、大気を通るときのオゾンによる吸収も少なくなり、紫外線は強まると説明されていました。一般的に、UVインデックスは標高が1000m高くなると約10%増えるとされています。環境省のマニュアルでは、標高が1000m上がるごとに紫外線量は10〜12%増えると書かれていました。
たとえば、標高1500mほどのゲレンデなら、海の近くの平地と比べて、それだけで15%前後紫外線が強くなる計算になります。そこに雪の反射が加わるので、平地で過ごす冬の日とは、紫外線の条件がまったく違うと考えておきましょう。
気象庁のページには、山頂で空気が非常に澄んでいる場合などには、先ほどの割合以上に紫外線が強くなることがある、とも書かれていました。高層気象台が夏の乗鞍岳(標高2,772m)で行った観測では、快晴のとき、つくば(標高31m)と比べて紫外線が約40%強くなったそうです。
これは、1000mあたり約15%強くなる計算になると紹介されていました。この観測は夏のものですが、標高が高い場所では、一般的な目安より紫外線が強くなる場合があるということは覚えておきたいポイントです。気象庁も、登山など標高の高い場所に出かけるときは、紫外線対策を十分に行うよう呼びかけていました。
冬山の登山やバックカントリーなど、さらに標高の高い場所に行く人は、ゲレンデよりも紫外線の条件がきびしくなる可能性があります。行き先の標高を事前に調べて、準備の目安にしてみてください。
気象庁の「紫外線の性質」のページによると、紫外線は1年のうちでは夏、1日のうちでは昼頃に強くなるとされています。冬は夏より紫外線が弱い季節ですが、1日の中で見れば、やはり昼前後が強い時間帯です。環境省のマニュアルの図では、東京の夏の場合、午前10時から午後2時までの紫外線量が1日の60%を占めると示されていました。
環境省のマニュアルには、薄い雲ではUV-Bの80〜90%が通り抜けるとも書かれていました。曇っているから大丈夫とは言い切れないので、晴れの日はもちろん、薄曇りの日も油断しないほうがよいでしょう。
スキー場では、ちょうど昼前後に一番長く滑っているという人も多いのではないでしょうか。休憩のタイミングで日焼け止めを塗り直したり、ゴーグルをきちんとかけ直したりと、昼の時間帯を意識して対策しておくと安心です。
目に起こる「雪目(雪眼炎)」とは
雪の上で気をつけたいのは、肌の日焼けだけではありません。目も紫外線の影響を受けます。雪面など紫外線の反射が強い場所で起きる目の炎症は、「雪目(ゆきめ)」と呼ばれています。
雪目は角膜の炎症、症状は遅れて出るのでサングラスで予防
環境省のマニュアルでは、紫外線角膜炎について、強い紫外線を浴びたときに見られる急性の角膜の炎症で、白目の充血や異物感、涙が出るといった症状があり、ひどくなると強い目の痛みが出ると説明されていました。そして、雪面など特に紫外線の反射が強い場所で起きる「雪目」が有名だと書かれています。
済生会の病気解説ページでは、雪眼炎は長い時間紫外線にさらされることで起こる目の障害で、晴天の雪原などで紫外線を浴びて起こることからこの名前がついたと紹介されていました。雪山の雪面からの反射のほか、海岸や高山で強い太陽光を浴びることでも起こるそうです。
済生会のページでは症状として、異物感、まぶしさ、目の痛み、涙が出続けること、目を開けにくいこと、視力障害、充血などが挙げられていました。目の表面にある角膜は紫外線を吸収しやすい性質があるので、目も肌と同じように守る必要があるわけです。
雪目のやっかいなところは、紫外線を浴びた直後には症状が出にくいことです。環境省のマニュアルによると、昼間に紫外線を浴びた場合、夜から深夜、あるいは翌朝にかけて発症し、大部分は24〜48時間で自然に治るとされていました。
千葉市医師会の健康コラムでも、紫外線を浴びた直後は無症状で、数時間ほどたってから発症することが多く、寝ている間に突然の痛みで目が覚めることもあると書かれています。治療をすれば角膜が再生され、通常は1〜2日ほどで治るものの、症状がよくならない場合は眼科専門医を受診するよう呼びかけていました。
済生会のページでは、体が温まる入浴や飲酒は炎症を悪化させるので控えることが望ましいと書かれていました。滑り終わった夜に目がゴロゴロしたり、痛みが出てきたりしたら、雪目の可能性も考えて、早めに眼科に相談するようにしましょう。
済生会のページでは、スキー場や海水浴場、標高の高い場所にいるときは、紫外線を防ぐのに役立つサングラスやゴーグル、遮光眼鏡をかけることが第一だと書かれていました。千葉市医師会のコラムでも、スキー場や雪原を訪れるときは、サングラスやゴーグルを必ずかけるよう呼びかけています。
環境省のマニュアルによると、紫外線防止効果のあるサングラスや眼鏡を正しく使うと、目に入る紫外線を最大で90%カットできるそうです。選ぶときは紫外線防止効果がはっきり示されたものを選び、プラスチックのレンズの場合は「UVカット」の表示があるものを選ぶよう書かれていました。
また、目には正面からだけでなく、上や横、下からも光が入ってきます。レンズが小さいものや顔に合わないものでは、正面以外からの紫外線を十分に防げないため、ゴーグルタイプや顔にフィットする大きめのものを選び、帽子もかぶるとよいと紹介されていました。雪の照り返しは下から来るので、すき間の少ないゴーグルは理にかなっていると言えますね。
スキー場で顔と肌を守るための準備
ここからは、スキー場で肌を守るための準備を考えてみましょう。気象庁のページにあるとおり、帽子や日傘は上からの紫外線には役立ちますが、雪からの反射は下から届きます。上と下の両方を意識するのがポイントです。
顔・唇・耳・首の守り方と、子どもと行くときの注意
スキーやスノーボードでは、ヘルメットやニット帽で頭を覆っていても、顔はむき出しになりがちです。特に、雪の反射を受けやすいあごの下や鼻の下、ほおなどは、ふだんの生活より日焼けしやすい場所だと考えられます。日焼け止めを塗るときは、こうした部分まで塗り残しがないようにしましょう。
日焼け止めは、汗や雪、転んだときの摩擦などで落ちることがあります。休憩のたびに塗り直すことを前提に、ポケットに入る小さめの容器を持っていくと便利です。グローブを外す手間を考えると、スティックタイプなど手を汚しにくい形を選ぶのも一つの方法でしょう。
顔を覆うフェイスマスクやネックウォーマーは、寒さ対策と紫外線対策を同時にできるアイテムです。肌が隠れている部分は紫外線を浴びにくくなるので、日焼け止めとあわせて使うと安心できます。ただし、隠れていない目の周りや鼻のまわりは、日焼け止めをしっかり塗っておきたいですね。
意外と見落としがちなのが、唇や耳、首まわりです。唇は乾燥しやすいうえに、ふだんは日焼け止めを塗らない人も多い場所です。UVカット効果のあるリップクリームを使うと、乾燥対策と紫外線対策を一緒にできます。
耳はヘルメットやニット帽で隠れることもありますが、帽子の形によっては耳たぶが出ていることがあります。首まわりも、ウェアのえりとフェイスマスクの間にすき間ができやすい部分です。出かける前に鏡の前でウェアを着て、肌が出ている部分を確認しておくとよいでしょう。
ゴーグルやサングラスを外したときに、目のまわりだけ日焼けしていない「ゴーグル焼け」になってしまうこともあります。ゴーグルのふちのあたりも塗り残しやすいので、日焼け止めは目のまわりのきわまで丁寧に塗っておくと、きれいに仕上がりやすくなります。
家族でスキー場に行くときは、子どもの紫外線対策も忘れないようにしたいところです。子どもは夢中になって長い時間雪の上で遊ぶことが多いので、こまめに休憩をとって、そのたびに日焼け止めを塗り直してあげるとよいでしょう。
子どもの目を守るために、子どものサイズに合ったゴーグルやサングラスを用意しておくのも大切です。環境省のマニュアルにあるように、顔に合わないものでは横やすき間から紫外線が入ってしまいます。実際にかけてみて、すき間ができないかを確認してから選んでみてくださいね。
雪遊びやそり遊びなど、滑らない日でも、雪の上にいる時間が長ければ紫外線の条件は同じです。帰ってから子どもが目の痛みや異物感を訴えたら、雪目の可能性も考えて、早めに眼科で相談するようにしましょう。
まとめ:雪の上では「下からの紫外線」を意識しよう
最後に、雪の照り返しと紫外線について、この記事で紹介したポイントを振り返っておきましょう。冬でも、雪の上と山の上では、紫外線の条件が平地とは大きく違います。
- 新雪の紫外線反射率は80%で、草地やアスファルト(10%以下)よりずっと高い
- 雪による反射で、冬でも2倍近い紫外線を浴びることがある(環境省)
- 標高が1000m高くなると、紫外線は約10%強くなる(気象庁)
- 雪目は紫外線による角膜の炎症で、浴びてから数時間後や夜に症状が出ることが多い
- 目はUVカット表示のある、顔にフィットするゴーグルやサングラスで守る
- 顔は日焼け止めを塗り直し、唇や耳、首まわり、あごの下も忘れずに
雪の上では、空からの紫外線だけでなく、足元から返ってくる紫外線にも囲まれています。スキーやスノーボード、雪遊びに出かけるときは、ゴーグルと日焼け止めを持ち物リストに加えて、冬のレジャーを安心して楽しんでくださいね。